日本が最も特別な思い入れを持つ国は、現在はアメリカですが、古くは中国でした。そして、イギリスだったこともあります。
19世紀中葉、日本が鎖国を解いて近代化を始める時、産業革命を最初に成し遂げ、フランスと競って世界最大の領土を所有し、一人勝ちしたのがイギリスでした。日本にとってイギリスは「あこがれの的、最大の目標、到達すべき地点」でした。イギリスは、あとに続く我々へのお手本を示してくれる国だったのです。そんな特別な国として、日本人はコンプレックスを抱えつつも、イギリスを理想化してきたと思います。
アメリカが独立した後、君臨していたイギリスはインドを帝国の要とし、インドへの道(帝国道:empire route)を確保することが至上命令となりました。このルートを通って多くのインド人がイギリスへ移住しました。今回の取材で、夕食のために訪れたロンドン市内のインド街。そこはインド世界でした。日本の都市でもそれぞれのエリアには固有の特徴がありますが、ロンドンではそれに加えて、世界各地の人々の衣食住を垣間見ることができます。
さて、ロンドンの住宅の特徴はレンガ造りの長屋です。各家には煙突があり、一昔前にはそれらから出る煙によって「霧のロンドン」ができました。現在は代替エネルギーによって、ロンドンの空は綺麗になりました。一方、煙突もレンガ造りもそのままに残されています。人々の生活スタイルや価値観が多様化する現代においても、伝統的な技術や様式による建造物自体は守られているのです。都市全体の景観には統一感が見られます。
今回訪れた6 軒のお宅では、外観と内部とのコントラストに驚かされました。住む人の個性は、建物の外観よりも内部や庭に表れている家がほとんどでした。特に庭へのこだわりはどの家にも見られます。家へのメンテナンスや庭造りには時間を惜しまないという印象です。1 世代ごとに新住宅が着工される日本の住宅に比べて、長持ちするイギリスの住宅を支えるものは、そのような先を見越した細やかな配慮かもしれません。「イギリス人ほど家を大切にする国民はいないだろう」長年現地に住む日本人ドライバーの言葉を聞きながら、車窓に流れる赤茶色の家々を眺めていました。
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