クールな外見に多角の表情 ― 出窓のアイデアが生きています。
ロウアーイーストサイドは、ヒスパニック系やユダヤ人など移民が多く住むエリア、多様な文化がミックスしている町です。ニューヨークで典型的な下町のアパートが並ぶ中にふと足がとまる一風変わったマンションを訪問しました。
「The Switch Building」― 名前もモダンなこのマンション。設計したのは若い建築家夫婦、ミミ・ホアン(MimiHoang)さんとエリック・バング(Eric Bunge)さんです。おふたりともハーバード大学で建築学修士号を取得しています。大学卒業後の1995年に結婚、1999年に設計事務所「nARCHITECTS」を設立しました。奥さまのミミさんはベトナム生まれで1975年にご両親と共にアメリカへ移住しました。ご主人のエリックさんはカナダ出身で、最近アメリカへ移住しました。おふたりとも建築家として活躍するかたわらで教鞭もとっています。ミミさんはコロンビア大学とエール大学で建築学、エリックさんは母校のハーバード大で環境建築学の講師をしています。
そんな多忙なおふたりに最上階7階のモデルルームを案内していただきました。玄関はなく地階からのエレベーターが開くとすぐに室内です。この部屋の特徴のひとつは、室内の中央部分に設けられた大きな階段です。この階段は上階の天窓より光を運んでくるための「明かり」の役割を担っているそうです。なるほど位置や大きさのわりには圧迫感はなく、むしろ室内を明るく温かい雰囲気にしています。もうひとつは、リビングとダイニングに広がる角度が付いた大きな出窓です。この出窓は左右のどちらか一方が斜めに広くなっています。建物の外観を見ると各階の窓に異なる角度が付いているのがわかります。上階と下階からでは景観が異なるのは当たり前ですが、各階で違ったアングルの景色を望んでいるとなると特別感がプラスされます。室内からも外観からもアクセントになっているこの窓が「The Switch Building」の所以です。
アルミの外観に多角形の出窓、モダンでおしゃれな印象を受けるこのマンション。「Switch」のデザインは最近建築されたニューヨークの窓にも見るようになったといいます。しかしおふたりにとって建築はつねに流行の外にあります。「様々な制約のなかでも精一杯に楽しみながら発明していくことを大切にしています。つねに創造的なものを考案していくことが私たちのデザインのコアにあります。」仕事でもプライベートでも呼吸がぴったりのパートナー、ニューヨークの建築に新たな景観を期待します。