オペラのための夢の家です。
アンソニー・アマト(Anthony Amato)さんはイタリア移民で、かつては声楽を教えていました。現在はこのオペラハウスで舞台指揮をしています。イタリアの音楽家一家に生まれたアンソニーさんは、音楽の中で育ち、家族を通じて音楽を学びました。ニューヨークへ移住してこの「オペラのための夢の家」を今は亡き奥さまのサリー(Sally)さんと一緒に作りました。サリーさんはアンソニーさんと舞台で歌い、衣装を縫製し、未来のスターを育ててきた「アマトペラ」のお母さん。アンソニーさんの最愛のパートナーです。
ニューヨークの下町、イーストビレッジにあるこの3階建ての建物は、もともとは倉庫でした。アンソニーさんは1947年にここを買い取りオペラハウス「アマトオペラ」と名づけ、設計と改装をしました。客席は100席程度で舞台も20人あがるのがやっと、という小さな劇場です。舞台装置や照明はアンソニーさんをはじめメンバー全員で創作しました。舞台のちょうど真下にあたる部分にはオーケストラ・ピットを設え、音響機材や照明装置、空調設備を置くために改造しました。奥のトンネルは舞台の後方へとつながっています。2 階部分には60 年の歴史を物語る楽屋や衣装室、オフィスがあります。「国立劇場のような規模にすることよりも、自らの手で創造していく、それができることのほうが大切だった」と語るアンソニーさんは、ここをファミリー経営のオペラハウスとして維持していくことを誇りに思っています。
そんな「アマトオペラ」の魅力は、舞台と観客とが一体感を楽しめるところです。「いつかは大舞台で」と夢みるスターの卵たちにとって「アマトオペラ」の舞台は、自分の実力を観客の反応に照らしながら高めていける格好の環境といえます。他方で観客は役者の汗や息まで感じとることができ、手に汗握っての鑑賞です。上演される曲目は大劇場と同じ本格的なオペラでありながら舞台と観客との距離は物語や音楽に入り込める近さ。オペラに親しみを感じさせます。2008年から2009年には61回目のシーズンを迎えます。取材日にはちょうどその翌週より上演されるモーツァルトのオペラ*のリハーサルを見ることができました。舞台で指導するアンソニーさんはアマトオペラのお父さん。「ここは妻と私のドリーム・ハウスです」と語る情熱が今日も夢の灯りを守り続けています。
※「コジ・ファン・トゥッテ」(Cosi fan tutte):モーツァルトが1790 年に作曲したオペラ。物語は姉妹の恋人である2 人の男が、
それぞれの相手の貞節を試すために互いの相手を口説いたら、2 人とも心変わりしてしまった。どちらも言い分がありそのまま認めあう
しかないものだということ。タイトルの意味は「Cosi このようにfan するtutte すべての女性は」。アマト・オペラでは英語での上演。