ヘルシンキから車で約1 時間、フィンランドで2 番目に古い町ポルヴォーを訪ねました。1346 年に設立されたこの町は「過去と現在が魅力的に溶け合った町」と呼ばれ、町の各所にそれぞれの時代の名残が見られます。ポルヴォー川沿いには木造家屋が建ち並びます。その一角に、200 年前に建てられた木の家があります。
穏やかな笑顔で迎えてくれたのは、マイヤ・アーテロ(Maja Aatelo)さん。マイヤさんはポルヴォーに25 年間お住まいで、長年この町でケミカル・エンジニアとして働いていました。現在はグラフィックアートと墨絵の趣味に活動されています。1994 年にこの家を購入しました。
150uあるこの家は、もともとは倉庫でした。あまりにも状態が悪かったためポルヴォー文化財保護局より建て直しの許可が下りていました。「外観は倉庫のようなままにするように」との条件をふまえて、外観の一部は赤色に、窓は小さめを保持しています。
この家の特徴は、歴史的な外観の他に、各部屋にテーマカラーがほどこされている点にあります。部屋によって壁の色が異なっています。リビングは白と黄色、書斎はローズレッド、寝室は薄い緑色と白が基調になっています。マイヤさんに、部屋を色分けした理由を尋ねました。ひとつは、フィンランドの伝統に基づいています。もともと古い家というのは各部屋に色の使い分けをしていたという歴史があるそうです。大統領官邸や貴族の館では、昔からコーヒーを飲む部屋は黄色、おしゃべりを楽しむ部屋は青色というように部屋のテーマが色で表現していたそうです。マイヤさんもそれを参考にされたようです。もうひとつの理由、家具を購入する際にどの部屋に合うかイメージがあると選びやすくなるという点も、部屋を色分けするメリットだそうです。マイヤさんにとっての理想の住まいは、夏は涼しく冬はあたたかい木の家です。夏は木が呼吸するため過ごしやすく、冬は暖炉によってあたたかさを作りだしてくれます。
フィンランド全体で、一軒家といえば伝統的にも歴史的にも木造の家です。実際、このポルヴォーには300 軒近い家がありますが、その中で石の家は6 軒のみだそうです。木の家は手間がかかるのにも関わらず、一番に好まれているようです。歴史的にも文化的にも豊かなこの町で200 年も前から呼吸し続ける木の家に住まうことは、マイヤさんにとって特別でありながらも、とても身近なことのようです。
子供の頃から色の好みが独特だったと語るマイヤさん。夢はインテリア・デザイナーか科学者になることだったそうです。「現在はこのように自分の家を自分の好みでデザインできたことが、とても幸せです。実際、この家の内装には家族全員がかかわり、ファミリー・プロジェクトとして作り上げたものです。その意味でも私にとって特別な家です。」

